店舗物件を借りて開業・改装するとき、引き渡し状態には大きく「居抜き」と「スケルトン」の2種類があります。どちらかで初期費用の中身・工期・設計の自由度・退去時の負担が変わります。

この記事は、用語と費用構造の違い、契約前に確認する事項をまとめたものです。どちらが有利かは物件・業態・資金計画によって変わる個別判断のため、断定はせず判断の材料を示すにとどめます。


1. 用語の定義

はじめに「居抜き」「スケルトン」「原状回復」の3語を押さえます。

  • 居抜き: 前のテナントの内装・厨房設備・什器などが残った状態で引き渡される物件。造作(内装や設備)を引き継いで使えるのが特徴です。
  • スケルトン: 内装や設備が撤去され、床・壁・天井の下地やコンクリート躯体がむき出しの状態。ここに一から内装を作ります。新築テナントビルの多くはこの状態で引き渡されます。
  • 原状回復: 退去時に、契約で定められた状態に戻すこと。「スケルトン戻し」を求められる契約もあります。

同じ「居抜き」でも、どこまでの造作が使えるか・誰の所有かは物件ごとに異なります。言葉の定義だけで判断すると「使えると思っていた設備が使えない」という食い違いが起きるため、実態は契約書と設備の現物で確認します。

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2. 費用構造の違い

居抜きとスケルトンでは、費用の「かかる場所」が違います。

スケルトンは内装・設備をゼロから作るため、内装工事費と設備導入費が費用の中心になります。設計の自由度が高い分、工事のボリュームは大きくなりがちです。退去時は契約に応じて原状回復の費用が生じます。

居抜きは既存の造作を引き継ぐため、内装・設備の新設費を抑えられる可能性がある一方、造作を譲り受ける対価(造作譲渡料)、既存設備の点検・補修・更新費、引き継いだ設備のリース残債などが費用として現れることがあります。

つまり「居抜きは安い/スケルトンは高い」と単純化はできません。費用は物件の状態・引き継ぐ設備の内容・業態・工事範囲で変わるため、どこにお金がかかるかの構造を踏まえたうえで、物件ごとに見積もることが前提になります。内装費の内訳については店舗の内装費の考え方でも整理しています。


3. 居抜きで確認すること

居抜きでは、何を・誰から・どの範囲まで引き継ぐのかを、賃貸借契約とは別の「造作譲渡契約」で確認します。主に次の4点です。

  • 造作の所有権と範囲: 引き継ぐ内装・設備のリスト、それぞれの所有者(貸主か前テナントか)、譲渡の対価。
  • リース残債: 厨房機器・空調などが前テナントのリース物件で、残債や契約が残っていないか。残っている場合、誰が引き継ぐのか。
  • 設備の状態と耐用年数: 引き継ぐ設備があとどれくらい使えるか。会計上の法定耐用年数は、更新時期を見積もる目安になります(実際の寿命は使用状況で異なります)。
  • 退去時にどこまで戻す義務があるか: 居抜きで入って造作を引き継いだ場合でも、契約次第では退去時にスケルトンまで戻す義務を負うことがあります。

4点目は特に見落としやすいところです。入居時の状態と退去時の義務は一致するとは限らず、居抜きで入ったのに前テナントの造作まで含めて撤去する義務が自分に来ることがあります。事業用店舗の原状回復は基本的に契約書の定めが優先するため、入居時に条項を読み込んでおくと、退去時の解体・撤去費の見通しが立ちます。

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4. スケルトンの自由度と工期

スケルトンはゼロから設計できるため、レイアウトや意匠の自由度が高くなります。一方で内装・設備・給排水・電気などをすべて新設するため、設計・確認・施工の各工程に相応の期間が必要です。

自由度の高さは、そのまま工期と費用のボリュームにつながります。開業希望日から逆算して、設計 →(必要なら確認申請)→ 施工 → 各種検査・届出の工程が収まるかを、物件を決める段階で確認します。用途変更を伴い、その部分が200平方メートルを超える場合は建築確認申請が必要になり、工程はさらに伸びます。

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5. 契約前に確認する書類

居抜き・スケルトンのどちらを選ぶ場合も、契約前に次の4種類を取り寄せて突き合わせます。

  • 賃貸借契約書(案): 使用目的・業態の制限、工事の可否と承諾条件、原状回復の範囲、保証金・解約予告などの条件。
  • 造作譲渡契約書(居抜きの場合): 引き継ぐ造作のリスト、所有区分、対価、リースの有無、撤去義務の所在。
  • 設備のリスト・保守/リースの資料(居抜きの場合): 各設備の年式・状態・リース残債・保守契約の有無。
  • 図面・建築確認と検査の記録: 平面図、(あれば)確認済証・検査済証や台帳記載事項証明。

これらは費用・工期・退去時負担・適法性の判断材料です。現地の印象や口頭の説明だけで物件を決めると、契約後に条件の食い違いが表面化します。特に検査済証など建物の適法性に関わる記録の有無は、後の用途変更・増改築や融資に影響することがあります。書類以外も含めた契約前の確認事項は物件を契約する前に確認する7項目にまとめています。

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まとめと注記

居抜きとスケルトンは、初期費用の中身・工期・設計の自由度・退去時の負担がそれぞれ異なります。どちらが有利かは物件・業態・資金計画によって変わるため、実際の物件・見積・契約条件を並べて比べることになります。この記事で整理したのは、その比較をするための前提です。

この記事は、用語の定義と法令・公的制度に基づく一般的な考え方を整理したものです。特定の物件について、居抜きとスケルトンのどちらを選ぶか、この造作を引き継いでよいかといった個別の判断は、物件の実態・図面・契約条件・見積を確認したうえで、建築士・不動産・行政書士などの専門家が行うものです。本記事は個別の可否や有利不利を判断・保証するものではありません。掲載している一次情報リンクと法令の内容は 2026-07-31 時点で確認したものであり、制度改正等で変わる場合があります。実際の手続きの際は、最新の一次情報を確認してください。